漢方における気滞とは?症状や原因を解説

漢方医学では、体の不調の原因として「気滞」という概念が用いられます。
これは、体内の生命エネルギーである「気」の流れが滞る状態を指し、様々な身体的・精神的症状を引き起こすことが知られています。
今回は、漢方における「気滞」について、その具体的な症状と原因を解説します。
漢方における「気滞」とは
生命エネルギー「気」の停滞した状態
漢方では、生命活動の根源となるエネルギーを「気」と呼びます。
この「気」は、体中をスムーズに巡ることで健康を維持していますが、何らかの原因でその流れが滞ってしまうと、「気滞」の状態になります。
これは、単なるエネルギー不足ではなく、エネルギーが停滞することで様々な不調が生じることを意味します。
体の様々な部位に停滞した「気」は、圧迫感や痛み、機能低下といった症状を引き起こすため、その原因を特定し、適切に対処することが重要になります。
様々な身体的症状や精神的症状を引き起こす
「気」の滞りは、身体的な不調だけでなく、精神的な不調にも繋がります。
スムーズな「気」の流れは、心身両面の安定に不可欠であり、その滞りは、心身のバランスを崩す要因となるのです。
具体的な症状は、人によって異なり、また複数の症状が同時に現れる場合もあります。
そのため、自身の症状を丁寧に観察し、適切なケアを行うことが求められます。
気滞の具体的な症状
情緒不安定になりやすい
気滞によって、感情の起伏が激しくなり、些細なことでイライラしたり、落ち込んだりしやすくなります。
これは、「気」の滞りが精神活動に影響を及ぼすためです。
また、不安感や焦燥感といった精神的な症状も現れることがあります。
これらの症状は、日常生活に支障をきたす可能性もあるため、注意が必要です。
胸や脇腹部の張りや痛み
「気」の滞りは、胸や脇腹部に張りや痛みとして現れることが多くあります。
これは、滞った「気」がこれらの部位に圧力をかけるためと考えられます。
この痛みは、鈍痛であったり、鋭い痛みであったりと様々で、時間や状況によって変化することもあります。
げっぷやため息が出やすい
「気」の滞りは、消化器系の機能にも影響を与え、げっぷが出やすくなったり、ため息をつきやすくなったりします。
これは、滞った「気」が消化器官の働きを阻害するためです。
また、胃もたれや便秘といった症状を伴うこともあります。
生理不順や生理痛
女性の場合、気滞は生理不順や生理痛を引き起こすことがあります。
これは、滞った「気」が子宮や卵巣の機能を阻害するためです。
月経周期の乱れや、強い生理痛に悩まされる方も少なくありません。
気滞の原因とは?
過度なストレス
例えば、毎日のように長時間労働が続いたり、上司や同僚との人間関係に悩んだり、家庭での責任や介護に追われたりする状況は、強いストレスを生みます。
こうした状態が長引くと、交感神経が優位になりすぎて心身が常に緊張し、肩や首のこり、頭痛、胃痛などの不調が出やすくなります。
ストレスでイライラや落ち込みを繰り返すことも多く、心の不安定さが体にも影響し、「気」の流れがせき止められたような状態になります。
不規則な生活習慣
夜中までスマホやパソコンを使って寝る時間が遅くなる、朝食を抜いて昼に一気に食べる、ファストフードやコンビニ食に偏る、運動をまったくしないといった習慣は、体にとって大きな負担です。
特に睡眠不足は、ホルモン分泌や自律神経の働きを乱し、疲労感や集中力の低下を招きます。
また、食生活の乱れは胃腸の働きを鈍らせ、便秘や下痢を繰り返す原因となります。
運動不足は血流が滞り、体のめぐりが悪くなります。
これらが重なると「気」の流れもスムーズに循環せず、停滞を引き起こします。
感情の抑圧
例えば、言いたいことを我慢して心にため込んだり、悲しみや不安を外に出さずに押し殺したりすると、胸の奥に重苦しさを感じることがあります。
怒りを抑え込むことで、呼吸が浅くなったり、胃のあたりに張りを感じたりする人も少なくありません。
感情は体のリズムと深く結びついており、表現されない感情は内側でエネルギーの停滞を生み、「気」の流れを妨げます。
その結果、動悸、不眠、食欲不振など心身にさまざまな症状が現れることがあります。
気候の変化
春から夏にかけての急激な温度差や、梅雨の長雨による湿気、冬の冷え込みは、体の内外のバランスを大きく揺さぶります。
湿度が高いと体内の水分代謝が滞り、むくみやだるさを感じやすくなります。
寒さが厳しいと血管が収縮し、手足の冷えや肩こり、腰痛を招きます。
逆に猛暑では体力が消耗し、食欲不振や脱力感につながります。
こうした環境の変化は、体の循環機能を低下させ、「気」の流れが停滞しやすい状態を作り出します。
冷え性
冷え性の人は、手先・足先が常に冷たいだけでなく、下腹部や腰まわりも冷えやすいのが特徴です。
血流が悪いため酸素や栄養が全身に行き渡りにくく、疲れやすい、集中力が続かない、免疫力が下がるといった影響が出ます。
特に女性の場合は、下半身の冷えが子宮や卵巣の働きを妨げ、生理不順や生理痛を悪化させることがあります。
また、冷えによって胃腸の動きが鈍り、便秘や下痢を繰り返す人もいます。
このように冷え性は、体のめぐりを悪化させ「気滞」を引き起こす大きな要因となります。
まとめ
今回は、漢方における「気滞」について、その症状と原因を解説しました。
気滞は、生命エネルギー「気」の停滞によって引き起こされる状態であり、情緒不安定、胸や脇腹部の張りや痛み、げっぷやため息、生理不順や生理痛といった様々な症状が現れます。
その原因としては、過度なストレス、不規則な生活習慣、感情の抑圧、気候の変化、冷え性などが挙げられます。
もしこれらの症状に心当たりがある場合は、ときわ漢方薬局へお気軽にご相談ください。








