秋の気分の落ち込みと肺

こころの悩み

涼しくなってくると、理由もなく気持ちが沈む。ふとした瞬間に涙が出そうになる。そうした変化を、季節のせいだと片づけていませんか。東洋医学では、感情の動きは五臓と結びついていると考えます。そして秋に対応する感情は「悲」「憂」です。

五臓・季節・感情は、ひとつづきのものと考えます

東洋医学では、肝・心・脾・肺・腎の五臓それぞれに、季節と感情が対応すると考えます。春の肝には怒り、夏の心には喜び、長夏の脾には思い悩み、秋の肺には悲しみと憂い、冬の腎には恐れ。感情は心の問題であると同時に、体の状態と切り離せないものとして扱われます。

五臓・季節・感情の対応(相生の順に並ぶ)悲・憂恐・驚長夏気の動きは感情と結びつく※ 秋は「肺」の季節。悲しみ・憂いが出やすいと考えられています

図2:五臓と季節・感情の対応。秋は肺と「悲・憂」が対応します

秋に気分が沈みやすいのは、肺の働きが季節の影響を受けやすくなるためと考えられています。つまり、性格や気の持ちようだけの問題ではないということです。

秋に気分が沈む、三つの背景

肺のうるおい不足

乾いた空気で肺が影響を受けると、そこに対応する感情も揺れやすくなると考えます。空咳や肌の乾きを伴うことがあります。

夏の消耗の持ち越し

気(き)が不足すると、意欲や集中が続きにくくなります。だるさ・食欲の落ち込みと一緒に現れやすい形です。

日照時間の変化

日が短くなることで生活リズムが乱れ、眠りの質が変わります。東洋医学でも、陽の気の減少として説明されます。

タイプによって、感じ方の質が違います

タイプ 気分のあらわれ方 一緒に出やすいこと 重視する養生
気滞(きたい) もやもやする、ため息が多い 胸やお腹の張り、のどのつかえ 香りのあるもので気を巡らせる
気虚(ききょ) 意欲がわかない、続かない 疲れ、食欲の落ち込み、息切れ 胃腸をいたわり、休養を先に
血虚(けっきょ) 落ち着かない、涙もろい 眠りが浅い、目の乾き、動悸 血を養う食材と、目を休める
陰虚(いんきょ) 焦りやすい、寝つけない ほてり、寝汗、口の渇き うるおいを補い、夜更かしを避ける

同じ「気分が沈む」でも、背景が違えば整える方向も変わります。ご自身がどれに近いか、思いあたるところから見ていくと手がかりになります。

秋の気分を支える、日常の工夫

  1. 朝の光を浴びる──起きて三十分以内に、五分でも外の光にあたる。リズムを整える出発点になります。
  2. 呼吸を深くする──肺の季節です。吸うより吐くほうを長く、一日三回、一分だけでも構いません。
  3. 香りのあるものをとる──しそ、みかんの皮、三つ葉、セロリ、ミントなど。気を巡らせる分類の食材です。
  4. 予定を詰めすぎない──秋は本来、内に向かう季節です。夏と同じペースを保とうとしないほうが、体に合います。
気分の落ち込みが二週間以上続く、日常生活に支障が出ている、という場合は、季節性のものと決めつけず、心療内科や精神科などの医療機関にご相談ください。漢方はそうした治療と並行してお使いいただくこともできます。

まとめ

秋の気分の沈みは、体の状態と地続きのものとして見ることができます。「気の持ちようが足りない」と自分を責める必要はありません。体を整えることが、そのまま気持ちの支えにつながることがあります。ご予約のうえ、ぜひ一度お越しください。

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