むくみと水滞

季節の悩み

「熱中症対策に、こまめな水分補給を」――夏のあいだ、繰り返し耳にする言葉です。
もちろん、水分を摂ることは大切です。ただ漢方相談の場では、「水を飲めば飲むほど良い」という考え方には、少し補足が必要だと感じています。
夕方になると靴がきつい、朝の顔がむくむ、体が重だるい。そんな方は、ぜひ最後までお読みください。

漢方でいう「水滞(すいたい)」とは

東洋医学では、体を構成する要素を気・血・水の三つでとらえます。このうち「水」は、血以外の体液全般――リンパ液や汗、涙、消化液などを含む概念です。

水は本来、全身をめぐって体をうるおし、余ったものは排出されていきます。ところがこのめぐりが滞ると、必要のない場所に水が溜まってしまう。この状態を水滞、あるいは水毒(すいどく)と呼びます。

大切なのは、水滞は「水が多すぎる」というより「水がめぐっていない」状態だということです。溜まっているのに、必要な場所にはうるおいが届かず、喉が渇く。そんな一見矛盾した状態も起こりえます。

水滞のサインをチェック

  • 夕方になると足がむくみ、靴下の跡がくっきり残る
  • 朝、顔やまぶたがぼんやりむくんでいる
  • 体が重い、頭が締めつけられるように重だるい
  • 雨の日や台風が近づくと、頭痛やだるさが出る
  • めまいや立ちくらみを感じることがある
  • 舌が大きくむくみ、縁に歯の跡がついている
  • お腹を軽く揺すると、ちゃぷちゃぷと音がする感じがある

三つ以上当てはまる方は、体に水が滞っている傾向があるかもしれません。

夏の水分の摂り方――三つのポイント

1. 一度に大量ではなく、少しずつ

喉が渇いたからと、一気にペットボトルを飲み干す。これは胃腸にとって大きな負担になります。
コップ一杯ほどを、時間を空けて。同じ量でも、体の受け取り方は変わってきます。

2. 冷たすぎるものを続けない

水をさばくはたらきの中心にあるのが、脾胃(消化吸収のはたらき)です。そして脾胃は冷えに弱い。
氷入りの飲みものが続くと、水をさばく力そのものが落ち、かえって水が滞りやすくなる――というのが漢方の考え方です。
暑い日に冷たいものを一杯、は構いません。ただ一日を通して見たときに、常温や温かいものの割合を増やしていきたいところです。

3. 汗をかいたら、ミネラルも一緒に

汗で失われるのは水分だけではありません。水だけを大量に補うと、かえって体のバランスが崩れることがあります。
麦茶に少量の塩、梅干し、味噌汁。日本の夏の食習慣には、こうした知恵が自然と組み込まれてきました。

水のめぐりを助けるとされる食材

  • はと麦:余分な水分をさばくとされる代表的な食材。はと麦茶なら日常に取り入れやすいでしょう
  • とうもろこし(ひげも):ひげの部分は乾燥させてお茶にする使い方が知られています
  • 冬瓜:名前に冬とありますが、旬は夏。煮ものやスープに
  • 小豆:甘くせず、そのまま煮て食べるのが養生の観点では理にかなっています
  • 黒豆・枝豆:手軽に取り入れやすく、続けやすい食材です

「気」の力も欠かせません

水をめぐらせる原動力になるのが、気です。気が不足していると、水は動きません。
「むくみやすいうえに、とにかく疲れやすい」という方は、水をさばくだけでなく、気を補うことも一緒に考えていく必要があります。

むくみ対策というと利水(水をさばく)一辺倒になりがちですが、その方の体質によっては、まず気を補うことが先になる場合もあります。ここが、体質を見きわめて選ぶ意味の出てくるところです。

まとめ――「めぐる体」を目指して

むくみや重だるさは、多くの方が「体質だから」とあきらめてしまいがちな不調です。
けれど漢方の視点で見れば、そこにはその方なりの背景があり、整えていくべき方向が見えてきます。
なお、急激なむくみや片側だけのむくみ、息切れを伴う場合は、まず医療機関の受診をおすすめしています。そのうえで、日々の体づくりについて一緒に考えていければと思います。
ご予約のうえ、ぜひ一度お越しください。お待ちしております。

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