夏の疲れ方でわかる気血水

季節の悩み

同じ夏を過ごしていても、疲れ方は人それぞれです。
汗をかいてぐったりする人、めまいや立ちくらみが出る人、体が重くてむくむ人。「夏バテ」というひとつの言葉でまとめられがちですが、その中身はまったく異なります。
今回は、漢方のもっとも基本的な考え方である「気・血・水(き・けつ・すい)」を、夏の疲れ方を手がかりにご紹介します。ご自身の体質を知る、最初の一歩になるはずです。

体をつくる三つの要素

東洋医学では、体は気・血・水という三つの要素で成り立っていると考えます。この三つが十分にあり、滞りなくめぐっている状態を、健やかとみなします。

  • 気(き):体を動かし、温め、守るエネルギー。血や水をめぐらせる原動力でもあります
  • 血(けつ):全身に栄養とうるおいを届けるもの。精神の安定にも関わるとされます
  • 水(すい):血以外の体液全般。体をうるおし、余分な熱をさばきます

この三つには、「不足している」状態と「滞っている」状態があります。どちらが起きているかで、あらわれる不調も、選ぶお薬もまったく変わってきます。

夏の疲れ方から、体質をたどってみる

① 気虚(ききょ)――エネルギー不足タイプ

汗をかきやすい。少し動いただけで疲れる。声に力が入らない。食後に強い眠気が出る。風邪をひきやすい。
夏は汗とともに気が漏れ出ていくと考えるため、このタイプの方は夏の後半に大きく消耗します。
養生の方向:山芋、かぼちゃ、米、鶏肉、なつめ。しっかり休息をとることも、立派な養生です。

② 気滞(きたい)――めぐりの停滞タイプ

イライラしやすい。ため息が多い。胸やわき腹が張る。喉に何かつかえた感じがする。お腹が張る。
暑さによる不快感やストレスが重なると、この傾向が強まります。
養生の方向:柑橘類、しそ、ミント、香りのよいお茶。深呼吸や軽い運動も、気をめぐらせる助けになります。

③ 血虚(けっきょ)――栄養とうるおい不足タイプ

立ちくらみやめまい。顔色が悪い。眠りが浅く、夢が多い。肌や髪が乾燥する。爪が割れやすい。月経量が少なめ。
夏の食欲低下で食が細くなると、血をつくる材料そのものが不足しがちです。
養生の方向:なつめ、黒豆、レバー、赤身の肉、ほうれん草、にんじん。夜更かしを避けることも大切です。

④ 瘀血(おけつ)――血の滞りタイプ

肩こりや頭痛が慢性的にある。顔色がくすむ。目の下のクマ。月経痛が強く、経血に塊が混じる。
冷房による冷えは、血の滞りを強める要因になります。
養生の方向:玉ねぎ、青魚、酢のもの、シナモン。体を温め、こまめに動くことを心がけて。

⑤ 水滞(すいたい)――水の滞りタイプ

むくみやすい。体が重だるい。雨の日に不調が出る。舌の縁に歯の跡がつく。乗りもの酔いしやすい。
湿度の高い日本の夏は、このタイプの方にとって過ごしにくい季節です。
養生の方向:はと麦、とうもろこし、冬瓜、小豆。冷たい飲みものを控えめに。

「ひとつに当てはまらない」のが普通です

ここまで読んで、「いくつも当てはまってしまった」と感じた方が多いのではないでしょうか。
それが自然です。実際のご相談でも、単独のタイプにきれいに収まる方はほとんどいらっしゃいません。「気虚と水滞が重なっている」「血虚をもとに瘀血が生じている」といった形が一般的です。

そして重要なのは、これらのあいだには因果関係があるということです。
たとえば、気が足りなければ血や水は動きません。つまり水滞の背景に気虚があるなら、水をさばくだけでは足りず、気を補うことが先になる場合があります。
どこが起点になっているかを見きわめること。これが漢方薬を選ぶ際の、もっとも大切な作業です。

「証(しょう)」を見立てるということ

漢方では、その方の体質と現在の状態をあわせて「証」と呼びます。
そして証を見立てるために、四診(ししん)という方法を用います。顔色や舌を見る「望診」、声や呼吸を聞く「聞診」、生活や症状を伺う「問診」、脈やお腹に触れる「切診」。この四つを組み合わせて、体の全体像をとらえていきます。

ドラッグストアで漢方薬を手に取ることも、もちろんできます。それで調子がよいのであれば、それに越したことはありません。
ただ、「試したけれど、いまひとつだった」という場合。それは漢方薬そのものが合わなかったのではなく、証との噛み合わせの問題であることが多いのです。

まとめ――ご自身の体を知ることから

気・血・水という枠組みは、二千年近く受け継がれてきた、体を見るためのものさしです。
このものさしを手にすると、これまで「なんとなく不調」だったものに、輪郭が見えてきます。そして輪郭が見えれば、向き合い方も定まってきます。
ときわ漢方薬局では、母と私の親子で、お一人ずつしっかり時間をかけてお話を伺っています。夏の疲れが出やすいこの時期に、ご自身の体質を知ることから始めてみませんか。
ご予約のうえ、ぜひ一度お越しください。お待ちしております。

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